島旅のはじまりに


おはよう。
目覚めきらない体に冷たい風を受けながら、港へと向かう。
暗闇のなか、コンビニの明かりがやけに眩しく見えた。
ドミトリーを出て、広島県・福山駅の始発電車に揺られ、岡山県の宇野港を目指す。
カイロ代わりにしていたホットミルクティーは、いつの間にか姿を消していた。
少しずつ明るくなる空を眺めながら、そのことをぼんやりと思い出す。
駅にはアップライトピアノが置かれていて、腰をかける人の姿もあった。
宇野港に着くと、人影はまばらで静かだった。
直島・宮之浦行きの片道切符を買い、前に腰を下ろした釣り人の姿を眺める。
この港ではどんな魚が釣れるのだろう、とふと思う。
やがてフェリーに乗り込むと、海を渡る時間は思いのほか短く、気づけばもう島に到着していた。


ショートケーキと珈琲
港から電動自転車を走らせる。
肌寒い風に頬を撫でられながら坂道をぼっていくと、
やがて青い看板の珈琲屋さんが見えてきた。
丘の上にあるそのお店からは、瀬戸内海を一望できる。
大きな四角い窓から差し込むやわらかな光。
木の椅子やテーブルが静かに並び、どこか懐かしい空気をつくり出していた。
ショートケーキには、いちごがふたつ。
自家焙煎の珈琲と一緒に味わうと、時間がゆっくりと溶けていく。
深く腰をかけ、ただその贅沢を味わう。
帰り際、青い袋に入ったドリップコーヒーをお土産に選んだ。
旅の余韻を、少しだけ家に持ち帰るように。


●直島コーヒー / Naoshima Coffee
— 自家焙煎のコーヒーを素晴らしい景色と共に —
Locally roasted and brewed in Naoshima, Japan
Open hours : 8AM - 6PM (L.O 17:30)
Open days:FRIDAY - MONDAY
📍〒761-3110 香川県香川郡直島町3299-50
Instagram:@naoshima_coffee
南瓜に出会う


青い空と海を背景に、存在感を放つ南瓜。
遠くからでも浮かび上がるように目立つその姿に、心がワクワクと踊る。
〝太陽の『赤い光』を宇宙の果てまで探してきて、それは直島の海の中で赤カボチャに変身してしまった〟 草間彌生


フェリーを降りれば、光と海とアートが待っている。
坂をのぼれば、珈琲の香りとやさしい景色が迎えてくれる。
次の旅先に迷ったら、直島を思い出してみてほしい。