正方形の窓の向こうに
はじめてハッセルブラッドを手にしたとき、
「これはカメラというより、ひとつの宇宙だ」と思った。
NASAの月面着陸を記録したブランド――そう聞くだけで、どこかロマンを帯びている。
でも私が惹かれたのは、その偉大な歴史よりも、のぞき込んだ先に広がる正方形の世界だった。
ウエストレベルファインダーを覗くと、まるで小さなのぞき穴アート。
光が万華鏡のように整って、フレームのなかに現実が閉じ込められる。


手触り・音・呼吸
フィルムを巻き上げるとき、歯車が「カリカリ」と回る。
その手触りは、機械と自分が一体になるような心地よさがある。
露出を測り、ピントを合わせる。
時間はデジタルのように一瞬ではなく、
ゆっくりと呼吸を合わせるように進んでいく。
そして、シャッターを押すその一瞬。
「ガシャコン」という重厚な音とともに、
空気が少し震え、私の胸も一緒に高鳴る。
息を留めたその刹那が、
光の欠片としてフィルムに刻まれる。


時間
正方形のフレームに収まった景色は、
不思議と余白が生まれて、心の中まで映し出すようだ。
完璧さよりも、少しの揺らぎや偶然を大切にしたくなる。
だから私は、今日もハッセルブラッドを肩にかける。
ただ写真を撮るためじゃなく、
光と影と自分の呼吸が重なる時間を味わうために。


📷 Hasselblad 500C/M 基本スペック
- 発売年:1957年
- フィルムフォーマット:120フィルム(6×6cm判)
- ファインダー:ウエストレベルファインダー
- レンズマウント:カールツァイス製レンズ(Cレンズシリーズなど)
- 特徴:モジュール式(レンズ・ファインダー・フィルムマガジン交換可能)、堅牢な金属ボディ